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「ぁいてっこらっ杖はそうやって使うんじゃない!!」
ひと気のない早朝の公園の片隅に、杖の叫びが木霊した。

「もー…むりー…!」
風を起こす呪文を唱え、杖を振る。ただそれだけのこと。
そう、一言一句間違いなく呪文を唱え、術式に沿って正確に杖を振るだけのこと。
けれど青年の杖からは風のかの字も出てこない。木の葉一枚飛ばせない。
喚き散らして杖を傍らの木に打ち付ける青年。するとまた、杖が半分泣いているような声を上げてそれを制した。

「待てこら!だっ、いたっ、待てっ…て!やめんかい!!お前という奴は、俺をもっと大切にしたらどうなのだ!いいか、杖というのはそこらの火掻き棒とはわけが違うのだぞ!魂の宿るひとつの生命なのだ!そこのところをもう少しわか…」
「ぁぁー…っこのままじゃ留年しちゃうよー…!まじいやだー!留年っって響きだけでも格好悪いー!」
「おいお前聞いているの…」
「火と水はいいんだ!なんとか及第点はもらえるくらいには問題なく課題をこなせるんだ!なにがやばいって、土と風だよなー…!土はそれでも多少なりこなせるけども…っ風はなぁ―…!」
「おいお前っ」
「んぎゃー!!まじいやだー!ダチが先輩になるのってどうよ?いやだよなそんなんは!ひぃぃー…!まじでかみさまたすけてよー!」
「人の話を聞かんか!!!」

両手を空に突き上げて、そして力尽きて突っ伏す青年。
杖の声など完全無視だ。

まぁそれも、実は仕方のないことなのだが。

杖の声を聞くことができるのは、術者の中でも特に「高位」な者に限られる。中等学校で行われる進級試験での及第点すら危ういこの青年に、杖と対話するほどの実力はどう考えても、皆無。

そもそも杖というものは作られたときから魂を有している。
「樹の守人」と呼ばれる、木をはじめとする自然界との対話ができる特別な術者が育てた木から作られる杖。その杖は本体から切り離されて尚ひとつの魂として命と心、知恵を有している。
けれど、ほとんどの杖は自ら口を利かない。
己が認めた主人にしか耳を貸さず、また本来の力を貸さない。その時点ではどこにでもある、それこそ火掻き棒と変わらない。それでもその内に秘めた力は有り余る故に、杖自身が力を貸さずとも中級程度までの呪文ならばたいてい問題なく行使できる。
しかし、術者の力量があまりに己にそぐわない脆弱なものであると判断したならば、杖はどこまでも非情だ。場合によってはその術者を焼き殺したりなどもする。
人が杖を選ぶのではない。
杖が、人を選ぶのである。

「いいか、落ち着いてやればできるんだ。お前なら絶対できる。」
今、まったく力なき青年の手の内に大人しく収まっているこの杖は、実は使う者が使えばかなりの力を発揮する代物である。杖自身が探そうと思えば、かなりの高位の術者のものになることも可能なのだ。
けれど杖は、かれこれ5年近く青年のもとにいる。

はじめて青年と出会ったときに確信したからだ。
この青年こそが、己を御するに相応しい術者になると。
だから…
「落ち着け。たかだか風を操る程度のこと、お前にできないはずがないのだ。俺の目に狂いはない!」
こうしていつも青年を叱咤激励している。己の声が、青年に届かないことを知っていて尚、それでもいつかは届くと信じて。

これよりさらに数年後。
王宮の近衛隊隊長らとも張り合えるほどの強大な力を持つ一人の青年が、史上最年少の若さで近衛隊入隊を果たすこととなる。

けれどそれは、また別の話。
驚愕と、それからゆるゆるとやってきた歓喜と。
久しぶりに手にしたこの感覚。

活字中毒を自負する自分がどんな本にも興味を示さなくなって、早数ヶ月が経とうとしていた。
そんな時に出会ったとある本。

どんな本を読んでも面白いと思わなくなってきていた自分は、どれだけつまらない大人になってきているのだろうと正直がっかりしていた。
ゲームもつまらない。パソコンを開いて真っ白なワード画面に溜め息ばかりつくこの頃。
特に浮いた話もなく、ひとつのネタをぐるぐる弄ってみては、これはやっぱり話にならないと切って捨てては次の話のネタを探す毎日。こんなことでは今年中に投稿なんてできるはずもなく。
そもそも一年の半分くらいをネタづまりどんづまりで過ごしている自分に勝機はあるのかと。

でも、その本のお陰でまたやる気が漲ってきた。
教えてくれた貴方に最大の感謝を。

と、今回のお題。
大好きなファンタジー小説と、話の結びを似せてみた。「続きは君が考えてみよう」的な雰囲気はわりと好きだ。あんまりにも消化不良なそういう終わり方は嫌いだが…「これはこれとしてお話は終わり。続きはあるけど…それは読者にお任せ」というのが好き。

子供に夢を。
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