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闇を穿つ一筋の光。
その光はすいと闇を落ち、やがて闇の底に辿り着いた。そして純白の翼を広げ、金の嘴を鳴らして鳴いた。青灰色の澄んだ瞳が限りない闇のそのまた先を見据え、何度か瞬いた。

『北の御方。』
小川のせせらぎのように、呼ぶ。
応えはない。

『北の御方。』
春風の囁きのように、呼ぶ。
応えはない。

『北の御方。』
まどろむ午後の日差しのように、呼ぶ。
応えはない。

『どうかワタシの呼び掛けに応じてはくださらないか。…北の御方…ワタシは、御方を救うために、此処に参った。北の御方…ワタシは、御方のためなら命を失うことなど厭わない。』
小さな鈴の鳴るように、話しかける。
応えはない。

『主様が言っておられた。命など惜しくはないと…己が身を捨ててでも闇烏…御方を闇から救い出さなければと。主様は悔いておられる。私利私欲の為だけに御方を使役したことを、心から悔いておられます。』
金の嘴は必死になって鳴いた。翼を鳴らし、いくつもいくつも真珠の涙を零して泣いた。
闇の彼方に蹲っている、金の嘴が同じ獣として唯一心を許した相手に向かって、語りかけ続ける。喉から血が出ても、金の嘴は嘴を閉じなかった。

北の御方は聡明で美しい、漆黒の使い魔だった。
主もまた聡明で美しく、武芸に長けた美丈夫であり、また己に厳しく万人に優しい、北の御方と金の嘴にとって最愛の主であった。

…だがある日を境にして主は変わった。

主は守るべき王を失った。守るべき民の多くを失った。右腕と両目の視力、そして左耳を失った。
変わり果てた主は気が狂ったように敵国への憎しみを吐露した。主は国の為民の為…そして、亡くなった王と多くの民の為と言いながら、北の御方の力を北の御方が望まないやり方で使い続けた。
他の国を…他の国の民を滅ぼすためだけに。
北の御方は嘆いた、主を責めた、主を止めようとした、主を諭した。けれど主の耳には、そのいずれも届かなかった。
やがて北の御方はその身を闇に蝕まれ始め、力を失い、心を失った。生ける屍となった北の御方は、最後の力をみずから闇に委ねることで主の元から去った。

主は北の御方が居なくなってはじめて、我に返った。
金の嘴は気が狂いそうなほどの強烈な怒りと悲しみに耐え切れず、はじめて主を罵倒した。同じ獣として唯一心を許した北の御方を想うと……いや、それよりも北の御方に何をしてやることも出来なかった自分の不甲斐なさ想うと、ただ、泣き叫ぶしかなかった。
やがて主は自らの過ちの重さに病み、倒れた。

金の嘴は考えた。
自分の魂ひとつで闇から北の御方を救えるのなら、安いものだと。主の心を傷つけた代償は、北の御方を救うことで果たせるのではないかと。
だから金の嘴は闇に飛び込んだ。
全てを終わらせるために。

『北の御方…。』
『…捨て置け。』
そうして幾度呼びかけただろうか。ようやくひとつの応えがあった。金の嘴は歓喜にか悲愴にか、泣きたいほどの苦しみを覚えた。しかし、自分を落ち着けるようにゆっくりと嘴を開いた。
『北の御方…御方は主様の元へ戻らねばならない。』
『断る。ワタシのことは、二度と再び顧みるな。ワタシは…一人になりたい。もう充分に尽くした。ワタシという存在全て…魂までをも削って、最上の忠誠を持って仕えてきた。これ以上何を望む。』
『御方、主様が望むのは御方と再び合間見えることのみ。もう一度共に野を駆けたいと、言っておられた。』

長男沈黙が降りる。

『頼む…戻ってくれないか。もう、無理だ。』
『何を無理なことがありましょうか。』
『…ワタシがワタシでなくなっていくのが分かるのだ。ワタシはいずれ…全てを憎むようになるだろう。全てを貪り殺し、焼き払い、押し流し、呪うだろう。ワタシはすでに、闇に侵され始めている。』
『ワタシがお救い致します。どうか、御方の希望をワタシに預けてはくださらぬか。』

長い沈黙が降りた。

『……ワタシは、これ以上、何も憎みたくない。これ以上、何も壊したくない。これ以上…あの人…主を呪いたくはない。』
『そうはならないでしょう。主様は元に戻られた。御方もまた必ず、元に戻ることができましょう。…けれど、お二方が本当の意味で元に戻られるというのは…お二方がまた、お二人一緒にあってこそ、です。』

金の嘴は、一歩だって引く気はない。
金の嘴は、己の全てをかけてでも北の御方を闇から連れ帰ると、己に強く誓っていた。
もう負けない。
二度と、大切な者を失わないように。
失わないために、次は全力で手に入れると決めた。

主様と北の御方の時間を、己が手で取り戻す。
なんとなく思いつき書き出した話…の断片(断片っ?)
3作連続になるらしい…の断片(だから断片って!?)
断片なので、3作とも意味のとりづらいお話になるかと思われます。そんな理解しづらい話なんだったら上げるなよ、という感じですが、それでも生んだ以上は責任を持って育てたい親心(ナニソレ)

舞台は、衰退の一途を辿る古都。
主人公(主/3作目に出す予定…?)はその古都の王に幼い頃から使えている術者の長。1、2作目に出てくる二羽の獣(金の嘴と銀の嘴)は、この術者に使役される者。

三つの魂。
それは、三つの内のどれが欠けてもいけなくて、ひとつでも壊れると残りの二つも崩壊してしまう。
…最初に壊れたのは中核を成す魂。つまりは、主。

・金の嘴(白雲雀)「南の御方」
 純白の翼、金色の嘴、青灰色の瞳

・銀の嘴(黒鴉)「北の御方」
 漆黒の翼、銀色の嘴、青灰色の瞳

・主(人間)「術師の君」
 灰色の髪、灰色の瞳、褐色の肌、金銀の刺青

明るいお話が書けたらよいなぁ…とか、思ってみる。
いや、初っ端1作目から何だか暗いのだが…orz

いいさ、きっと、どうにかなるさ。
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