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坂道を、駆け下りる。
告げられたその報せを、あの人に真っ先に届けるため。

「ひゃっほーう!!みんな、聞いて!明日朝一番で、関所が開放されるって!!団長っ!僕ら、自由だよ!!また旅に出られるよ!!」
騒々しい街の片隅にある、小さな酒場。顔見知りばかりが年がら年中居座っている、ちょっとした集会所。酒場、という名でありながらもそこには大人だけでなく子供もよく遊びに来る。お酒のまったく飲めない紳士淑女もやって来る。
店主お得意のオムライスをご馳走になるために。
仲間と世間話に花を咲かせるために。

僕がそこに飛び込んで叫んだ第一声。
興奮している僕に対して、みんなはぽかんとした顔で僕を見つめるだけ。…なんだろう、僕の言うこと分からなかったのかな。そんなに早口で捲くし立てたつもりはないけれど。
「…お、おう…坊主。なん、だって?悪いがもう一度、言ってくれるか?…関所が…解放…てのは、なんだ、冗談か?」
僕は思い切り頬を膨らませた。不快感を顔全面で表すためだ。
空のグラスとナプキンを目の前に掲げたまま寝惚けたことを言っている店主の前に、僕はずかずかと歩みよる。勢いよく机の上に飛び上がると、店主…いや、団長のグラスをひったくった。そして、床に放り投げた。
グラスは耳障りな音を立てて砕け散る。
くぅー…!!なんて気持ちがいいんだろう。
「冗談なもんか!!いいか、さっき関所に役人たちがぞろぞろやって来て、それででっかい張り紙してったんだ!!そんでな、街中の人間にこれを知らせるためにって、ビラも沢山配ってたんだ!ほら、ほら、ほら!!!これ、見てよー!!」

僕は、団長に思い切りそのビラを押し付けた。
団長はそれでもまだ少しぼけらっとしていたが、僕が「団長!」と呼びかけると、はっとしたように僕からビラを奪い取ってそれに目を通し始めた。
いつの間にか団長と僕の周りには人の生垣ができていて、みんながみんな、団長の持つビラを覗こうと騒ぎ始めた。
流石に腐っても元旅芸人一座の団員。長旅で養った腕力だけには自信があるようだ。僕はあっという間に生垣の外に追い出され、店の隅っこで腐ることになる。

なんだよ、みんな。旅をするのはもう諦めたとか言ってたくせに、きっちり体力トレーニングしてんじゃないか。だって、僕を押し出したときの力ったら、かなりのものだった。
なんだよ、いつかくる解放日を待ち望んでいたのは僕と団長だけじゃないのかよ。…なんだよなんだよ、ひどいじゃないか。

…だってそうだろ。
この僕が、あの報せを持ってきたのに。この僕が、こうやってのけ者にされるだなんて。なんて屈辱的なんだ。もっと、褒めてくれたっていいのに。
しかも、僕と団長が解放日を心待ちにしているのを、みんなで笑ったくせに。どーせ無理だと言って、笑っていたくせに。…なんだよ、やっぱりみんな、本当は諦めてなかったんじゃないか。

この店に通ってくる子供は、僕ら一座の夫婦の子。紳士淑女も元は一座の人間。そう、この店は一座の解散を嘆いた団員たちのために団長が作ったお店。だからお客はみんな一座の人間。
今やお店は団長を中心に一枚の紙切れに大騒ぎだ。
腐りきった俺一人を残して、ね。

…さて、ずらずらと文字が羅列されているそのビラを僕なりに要約すると、こうなる。
『東の国と北の国の戦争勃発から四年、西の国(僕らのいるこの場所、ね)は戦争被害を避けるために関所を封鎖した。けど先日、二国間で休戦協定が結ばれた。だもんで、西の国は再び関所解放を行おうかと思う。ただし(この「ただし」が曲者なんだよなー)、これは明朝からの二日間に限る(二日間試験的に解放してみて、問題なければ今後も解放を行うってことらしい)。その二日間は正式な「解放」じゃないんで、関所を出たその日中に、また関所に戻って来ること。これを守れない者が出た場合は、本格的な解放は延期される。…まぁ、きちんと規則さえ守れば大丈夫さ。』
…て感じ。…ぁーぬるみきったオレンジュースが美味しいな。
けっ。折角吉報持ってきてやったのに、俺は、仲間はずれかよ。

「坊主!!やったなぁー!解放だぞ!また、あっちこっち行けることになりそうだぞ!おい坊主!また、旅に…旅に出られるぞー!!!」
「ぎぃゃあぁぁあ!!!」
俺は突然高々と持ち上げられた。団長に、だ。
正直なところ、男が男に持ち上げられて嬉しいことなんてひとつもない。いや、まぁ、女に持ち上げられたらもっとヘコんでしまうんだけど…。
けれど…うん。団長が泣いて喜ぶのを見ていたら。みんなが、抱き合ったり飛び上がったり、歌ったり踊ったりしているのを見ていたら。

腐った気持ちは消し飛んでいた。

「長かったなぁ…っっ長かったなぁ!四年間…ずっと待っていて…よかったなぁー!おい、坊主、旅だぞ!!夢にまで見た、旅だぞ!!」
「分かってるよ!旅だよ!またみんなで、海に行こうよ!夜は、森で歌って踊って…たくさん、色んな所に行こうよ!」

僕らは自由だ。
まだ完全に解放されたわけじゃないけれど、でも、その日は近い。
……長いな、これ。
いやでも、久し振りにちょっとは明るい話が書けたんじゃないかと…思わなくもない。「明るく楽しい気分になれるお話」…なんて感じでは全然ないけれど、それでも、ちょっと前までかなり鬱々としていた自分としては少しはまともに書けたんじゃないかと…(笑)
いまだ完全に脱してはいない、この鬱状態。こんな状態で、会社の最終面接をよく受けてきたなぁと思ってしまう。

時間は放っておいても容赦なく流れ去るもので。
欲しいときに限って、全然足りなくて。
必要ないときに限って、犬に食わせるほどあって。
今は、色んな意味で時間が欲しいと思っていて。
けれど、時間は待ってはくれない。仕方がないので色々なことを早急に決断しなきゃならなくて。…まったく、優柔不断で語彙力のない口下手な自分では、力不足も甚だしい。
今はただ、時間をフルに使ってやるべきことをやるしかない…って感じ(笑)

喫煙量が日増しに多くなっていく今日この頃。ヘビーなスモーカーさんだけにはなりたくないが……なったらどうしようorz
目の前の灰皿に、漫画のようにうず高く積まれた煙草たち。
…あ、箱が空っぽだ。
買いに行こう(もう駄目人間)
お金がマジでない。誰か買ってー(こら!!)
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