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何を望んで何を得たのか。
何を失って、何を欲するのか。

…なんにも分からなくなってしまった。

指先も手の平も凍るように冷たくて、掴んだ雪の塊が溶け落ちることはない。青年の体は芯から冷え切り、それでも寒さに震えることはしなかった。
「椿が咲きましたね…。」
「そうだな。今年はもう無理かと思っていたが、流石に君が特別に目をかけた土地だ…とても、強い。」
君…と。それは主君を指す言葉。青年が生涯をかけて仕える、漆黒の王。青年の発する「君」からは、青年の王に対する敬愛と絶対なる忠誠、そして信頼の情が垣間見えた。青年が王を如何に大切に想っているかは、脇に控える女以外、誰も知らない。
女は青年の言葉に無言で頷き、青年の頭上に広げている真っ赤な傘を持ち替えた。

腐敗した大地と、枯れた空。
精気は枯れ果て、最早救いようがないほどに大地は生きることを諦めていた。…故に、そこに住む人々は生活に窮することとなる。
やがて一人二人と生まれ育ったこの土地を捨て、遥か遠い都へと旅立った。
かつては花の都と称された広大な町は、今や瀕死の危機にある。

それでもこの土地で生まれ、この土地を愛し、最期をこの土地で迎えようとする者がいる。誰もが見捨てた土地の再生を願い、種を蒔く者がいる。
その願いを受け、種は芽吹き花を咲かせる。

ただ一輪の椿。
かつて、その土地一面に咲き誇った赤の花。

雪よりも白い青年の顔が、花びらが綻ぶように緩む。そっと椿の前に屈みこみ、そうして限りなく柔らかに…決してそれにはふれないように、椿の上に重く降り積もった雪を払った。
「これを植えた男は、これを見ることなく逝ってしまったのか。…残念だったな。」
笑みを崩すことなく、まるでかわいそうがる様子もなく淡々と言う青年。その背後に気配もなく立つ女は空を仰ぎ、ちらつく雪に目を閉じた。
「確かに、残念ですね。けれど主、この椿の面倒は、男の妹が引き継いでいるんですよ。」
「妹…男には、そんなものがいたのか。天涯孤独の身ではなかったか?」
「いいえ、実は男には双子の妹が…いわゆる生き別れの兄妹というものがいたのです。男はそれを知らずして死に急ぎ、女は成人を迎えた。そして女は、その成人の儀の折に、これまで実の親だとばかり思っていた男女に真実を告げられたのです。私たちはお前の本当の親ではなく、生まれたばかりのお前を本当の親から買った人間なのだと。そしてお前には、双子の兄があるのだと。」
「……その女は、これが男の椿と知って面倒を見ているのか?」
「いいえ。女がこの都へ辿り着いた時、男は既にこの世を去っていました。女は偶然この庭を横切り、偶然この椿に目を奪われ、そしてこの椿に恋をしました。」
「だから面倒を見ている、か。…恐ろしい偶然もあるものだ。女の親は、女がこの死の都に根を張ることをよく許したな。」

「許してはくれませんでしたよ。」

ふ、と男の影にもうひとつ影が重なった。男がゆっくりと顔を上げると、そこには深緑色の髪を風になびかせた少女が立っていた。
「許しては、くれませんでした。けれど、私はどうしてもこの椿と共にいたかった。どうしても、一緒にいたかったんです。だから、親とは縁を切りました。婚約も破棄してきました。彼は私を愛してはくれたけれど、私を分かろうとはしてくれなかった。私は彼にとって、都合のいい自慢のお人形さんでしかなかった。……もはや私には、何一つ残ってはいないんです。あるとすれば、この椿だけ。」
少女は晴れやかに笑う。

「賢者様。私は今、とても幸せです。」
雲間から光が差す。
逆光の向こうで微笑む少女に青年は眩しげに目を細め、そしてつられるようにして小さく微笑した。女は久し振りに見た青年の本当の意味での笑顔に僅かに瞠目し、そっと目を伏せた。

「主、そろそろ行きましょう。」
「そうだな、君が待っている。……女、その椿、大事にするといい。私もまた、見に来させてもらおう。」
「はい、いつでもどうぞ。今度は温かいスープを用意してお待ちしております。」

ただ一輪の椿。
これが、東方の死の都と呼ばれていた町を救う鍵となることなど、今はまだ誰も知らない。
椿に恋をし全てを投げ出した一人の少女と、王のためならば命を落とすことすら厭わない一人の賢者との出会い。これは必然。

都が息を吹き返すのは、この出会いから四年後のこと。
まだ誰も知らない真実。
ぁぁわー…前回更新してから、一体どれだけサボっていたのだろう…。恐ろしくって、今まで保存状態で待機させていた日記たちを総削除してしまった(ぇ)そんなわけで、しばらくはお題しか上がらないかもしれないこのブログ…駄目駄目じゃん…orz

就職活動はぼちぼちっす。波乱万丈、喧嘩上等、百発百中、穴があったら入りたい、な就職活動状況(何ダソレ)そんな事をしながらも29日の下架に向けてヨットの整備、というか清掃なんぞをしてみたり花見に誘われてお出掛けしてみたり。ヨットはといえば、あんなことで間に合うんだろうか…まぁ、大丈夫だろう。ふふり、乗るの楽しみー♪

つい先日、ようやくうちの近所でも桜が咲きました。
ひゃっほーぃ♪カメラの準備は万端、あとは撮りに行くだけー♪…なのに、どうでもいい用事が入ったり、折角のお休みだと思ったら天気が最悪だったり…マジ、凹みます。
こんなことでは、去年同様に桜シャッターチャンスを逃してしまう…。本体とレンズのクリーニングもばっちりすませてあるのに…(泣)

来週末は丘陵公園に行ってみようかと思ってます。チューリップが満開…のはず。晴れたらいいなぁ、桜が駄目ならせめてチューリップくらいはカメラに収めておきたい。
春真っ盛り、な風景を撮ろうと思うとあまりにも「春らしい春」という期間が短いことに驚かされます。夏も冬もあんなにも長いのに…。春と秋は、あっという間に木々が姿を変えてしまうので、時間との勝負です。開花然り、紅葉然り。

間に合うのか、自分。
あと、このお題は「願い星」を聞きながら書きました。
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