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風を切って走る。
『…長い夜も、いつかは必ず明ける。』

生暖かい風が少年の頬をかすめ、凄まじい勢いで後方へ飛んでゆく。轟々と鳴き喚く風はいずれも、疾走する少年に何も語りかけてはこない。少年もまた沈黙し、ただ、ひた走る。ふと少年が、上がった息を唾液ごと呑み込んで天空に視線を投げれば。

街を覆う朝焼けの天蓋が、黄色身を帯びてきていた。
間もなく夜が明ける。
そう、街の人間全てが待ち望んだ朝が、じきにやってくる。
『…長い夜も、いつかは必ず明ける。』

少年ははやる気持ちを抑えてもう一呼吸した。
足は既に棒のようで、それでも前へ前へと駆ける。地を掴んで、蹴って、掻いて、捉えて、放って。
額と頬を伝う大粒の汗。ぐっしょりと濡れた背中。それでも、少年の表情に苦しさは見られなかった。
少年は無意識にか、枯れた声で何かを呟きながら疾走している。それは自分に言い聞かせるように、自分を叱咤するように。

「……っぁ…さ、が…!!!は…く…早く…!」
『…長い夜も、いつかは必ず明ける。』

昇るまん丸の太陽に追われるようにして、少年は建物から建物に飛び移る。それはまるで疾風の如く。
少年は背後をちらりと振り返る。そうして、黄色い太陽を目にして輝くような笑顔を浮かべた。
生まれてはじめて目にする、とてつもなく大きな球体。

名は、「太陽」。

世界をあまねく照らし、天地に恵みを与えてくれるのだそうだ。
川面を煌めかせ、緑を育み、土を肥やしてくれるのだそうだ。
その存在は物語を見聞きして知っていたそれが、こんなにも大きくて力強くて輝かしいものだとは、少年は思ってもみなかった。

「こんな強風にも、びくともしないだなんて…。」

太陽は、雲より風より…空よりも高いところにあるらしい。
だから、風にも押し流されないんだと教えられたが…正直少年は信じていなかった。
この風の国の神、風神に吹き飛ばせないものがあるとは、思っていなかった。
たとえそれが世界の創造主、白神の住まう太陽であっても。

太陽は、ゆっくりと昇ってくる。地上の風などまるで無視して、少しずつせり上がってくる。
何の支えも無くして、不動。己の意志で、昇ってくる。

『…長い夜も、いつかは必ず明ける。』
「太陽、だ…!…っ朝が来たぞー!!!みんな、朝が来た!!」

街で一番大きな教会。その屋根の上。少し冷たい朝の空気。
かいだことのない、経験のない、朝の匂い。思い切り吸い込んで、そうして少年は声を張り上げた。
街に、少年の声が木霊する。

「朝だ!!太陽だ!!みんな、太陽が昇ってきたっ!!夢じゃない…夢じゃないんだっ…!夢じゃない…!!!」

街中、人が溢れかえった。
見たこともない光の洪水に怯えるようにして、そろそろと家から出てくる住人たち。風の国でありながらも、「夜の国」と呼ばれた国の住人たちが、手に手を取って建物から顔を出す。

少年の声に引かれるようにして、外へ。

そうして太陽を目にするや、歓声を上げて見知らぬ相手と抱き合って。手当たり次第に抱き締めあって。泣いて、歌って、笑って。まだ眠っている住人をたたき起こし、抱き締めあって。

少年はただ一人、教会の屋根の上でへたり込んだ。
食いしばる歯の隙間からは、誰にも聞こえないくらいの小さな呟き。見開いた瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちて。

「兄貴…。…兄貴は、やっぱり、俺との約束…っく…守ってくれるんだな。……ありがとう。ひっく……見せて、くれ…ありがとう…。ぁ、にき…ぅっ…あぁぁーっ…っ…。」

頭を抱えて丸くなる。
背中を丸めて、太陽の下で嗚咽する。
兄貴は、少年との約束を破った事は一度もない。少年は、兄貴に男は泣くなとよく叱られていた。けれどこれはうれし涙なのだと、少年は自分に言い聞かせる。こんなに胸が痛いのは……唐突に笑顔を作れなくなってしまったのは…きっと涙のせいなのだと。

少年の兄貴は、もう帰らない。
太陽がこの街に昇ることと引き換えに、命を落とした。
兄貴だけではない。兄貴と同じように「英雄」と呼ばれる他の国の誰かも、自分の命と引き換えに自分の国に何か吉兆をもたらしている。

兄貴は少年に、いつも言って聞かせた。
『…長い夜も、いつかは必ず明ける。』

「闇」の戒めから解放された風の国は、今こんなにも輝いている。
街は活気に満ち溢れ、みんなが泣き笑っている。

少年だけ、ただ泣いていた。
どうしたらいいのか分からなくて泣いていた。単純に喜べない自分が不甲斐なくて、兄貴にもう二度と会えないと信じられなくて。
本当は、兄貴が死ぬくらいなら、太陽なんて昇らなくてもよかったなんて…思っていたことを兄貴に謝りたくて。

今、こんなにも世界は明るい。
こんなにも、幸せに満ちている。
だから少年はもう一度顔を上げる。そうして太陽に手を伸べて、兄貴に誓った。

この地で生きる、と。
ぅーん…もっと単純に前向きなものを書きたかった(めそ/ぁ)
何故だか暗くなってしまうのは仕様だろうか。げふ…orz
このままではいかん、明るくいこうぜー!とか一人で気張ってみて、明るくするのは先延ばしにすることにした(ぇぇ)

今回のお題、「戒め」。
戒めから自分が真っ先に連想したのは鎖。……何故だッ!とかいう突っ込みは置いといて、とりあえずそれが何に対する何の戒めなのかは知らないが、それに次ぐ「解放」というものを書こうと思い立った。
そしてあえなく撃沈。
それでも精一杯前向きな感じには書けたと本人は思っていたり(ぁ)

太陽って偉大だなぁ。
闇の中って、落ち着く反面少しの恐怖も内在してる。そういう恐怖を根本的に払拭してくれるのが光という存在。けれど、日の光は強すぎると身を滅ぼしてしまう。だから、また人の心の平静を保つために闇が訪れる。

上手い具合に均衡が保たれてると思う。
同じく戒めという存在も、相反するものとして解放があるからこその戒めなのではないかと思う。

…なんて、少し難しいことを考えてみた○○歳の夜(パクりかよッ)
明日はどっちだ!!(またか)


追伸(終われよ)
ちなみに今回もイメージ曲を付属してみました。
「punish#2」…第一印象は戦闘シーンの曲。少年が一心不乱に疾走してる様がありありと浮かんでくる、そんな曲(お前だけだ)
下界の人間たちはいつも忙しなくて、色々なことに一喜一憂して騒いで……そんな中でも、日が昇ったり月が昇ったり、そういう自然の営みはのんびりと規則的に行われているものだと思います。
今回のお題は、そんな風にゆっくりとだけれど着実に昇る太陽に反した、少年の心の高揚や葛藤や悲しみや喜びなどを全部ひっくるめた感じが、お借りした曲とリンクさせられたら…と思って書きました。
曲をお借りしたのは他曲同様「Happy blessing」というHPです。本当に、素敵な曲ばかりがおいてあるHPです。
HPの構成…というか、色使いが優しくて綺麗です。是非一度訪問しては如何でしょうか。
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