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…此処は何処だろう。どうしてあたしは独りぼっちなのだろう。

それはほんの数瞬の出来事だった。
「…俺もすぐに行く。」
最後に彼があたしの耳元で呟いて、彼の剣はあたしを薙いだ。
そう、一瞬の出来事。
そうしてあたしは闇に落ちた。すぐに彼が来るのだと思って、じっとしていた。それなのに…沢山の人間が列を成して目の前を行く中に…彼の姿は見当たらない。
ようやく一緒にいられると思ったのに、あたしは独りぼっちだ。どうして彼は来ないのだろう。あたしはまた、独りぼっちだ。


それは、雪が深々と降る日の夜だった。

ひらり。はらり。はらり。ひらり。
雪が、降っていた。
底冷えする…体の芯から冷え込むような夜風。
星屑が瞬く漆黒の天蓋。

あたしはかじかんだ指先に息を吐く。
薄赤く染まった指先に、感覚はほとんど無い。

お気に入りの真っ赤なコートを羽織って、彼は来た。
あたしがいるのを見て、目を見開いた。
吐く息はとても白かった。

「帝国に…帰るんだろう。だからさよなら言いに来たんだ。」
あたしは微笑む。
「そうか…見送り、有難う。」
彼も微笑む。
あたしは思う。何て勝手なことを言うのだろうと…どうして置いていかれる者の気持ちが分からないのだろうかと。

「もしまた生きて会えたら…その時は、どちらかが死ぬ時だな。」
「そうだな…。俺たちは敵対者だ。」

このままこの国にいればいいのにと、思う。
けれどこれは彼の決めたこと。あたしは到底彼を止めるすべをもたない。そして彼もまた、あたしを連れて行くすべをもたない。

彼は、幼くして帝の玉座に据えられた幼き命を護ると決めた。
あたしは、闘神のようでありながらも心弱き女王の命を護ると決めた。
互いが命を賭して護るものがある。
それは、何にも変えがたい決意。

降りしきる雪の中、彼は微笑んだ。
あたしも微笑む。うまいこと、笑えているだろうか。喉がはりついたようにじんじんと痛む。声を出したら叫びだしそうだ。
「行かないで欲しい。」
とは、口が裂けても言っていけない言葉だと知っている。

不意に視界が滲んで、霞む。
…けれど、あたしは微笑む。

「俺がお前を殺す。」

最後の別れの挨拶を言おうとした刹那、彼が口を開いた。
何を言っているのだろうと、あたしはもう一度彼を見据える。

「つまらない奴らの手にはかかるな。……俺がお前を殺す。お前を、お前の好きな椿の赤で染めてやる。苦しまないように、殺してやる。」
「椿の華……それも、いいかもしれないな。……女王の身柄を無事に共和国まで送り届けられた暁には…必ず、お前を頼ろう…。」
「お前を殺したら、俺もすぐに追いつく。一人では行かせない…。…先に行かずに、待ってるんだぞ。」
「それは…無理だ。…あたしは地獄に落ちる。…お前は、天国だ。一緒にはいられない。でも、お前の手にかかって落ちる地獄なら、それもいいかもしれない…。」
「お前を殺して天国に行けるわけがない。」
「あたしは”敵”だ。大切な者のために敵を倒すのに、地獄に落ちるわけがない。」

「俺はお前と行く。神だって、そのくらいの我儘許してくれるさ。」
「………そう、か。」
「一緒に、行こう。二人なら恐くないだろう?」
「………そう、だな。」

そうして彼は雪の降る闇の中を駆けていった。
すぐ傍に咲いていた椿の華が、ぼとりと音を立てて落ちた。
あたしはフードを深く下ろして息を殺す。嗚咽は呑み込む。流れるそれは、きつく目を閉じてせきとどめ。


戦がはじまった。
あたしは女王を護り、戦った。
女王が共和国との国境へ差し掛かったとき、帝国に追いつかれた。女王だけでも逃がすため、囮をかってでた。

…闇に落ちた今となっては、女王の無事は確認できない。

あたしは不覚にも帝国の手にかかって重傷を負った。
けれど、死ぬわけにはいかなかった。
最期は彼の手にかかって死ぬのだと、約束したから。あたしは戦った。傷の痛みを殺して、多くの敵兵を薙ぎ倒した。

そうして、また彼に出会った。
彼はあたしを高圧的に見下ろし、蔑むように笑った。

「貴様が女王護衛軍の指揮官か。」
「如何にも。」
「痛々しい様相ではないか。ははっ…見ろ、コレはもう手を加えなくとも勝手に犬死するだろう。」
彼の声に、周囲の兵士がどっと笑う。やがて笑いがひとしきり収まると、彼は剣を抜いた。
「…女王は逃がしたが、せめて貴様の首を貰い受ける…!!」
「できるものなら…やってみよ!!」

戦いの最中、周囲の兵士は誰も手を出してこなかった。
彼の唇からは一筋の血が流れたが、それは、彼自身が舌を噛んで流れたものだ。
彼の瞳は泣いているように赤かった。

「泣くな。…そして、お前は生きろ。」
「一人では行かせないと言ったはずだ。……俺もすぐに行く。」


闇の中。あたしは未だ追ってくる気配の無い彼を待つ。
長いこと一人でいた。すると、ひとつの希望が見えた。
「…もしかして、生きている?…あたしの望みを…生きてくれと言ったそれを、叶えてくれるのか?」
そう思った。
けれど。

『彼は死にました。貴方を追って、間もなく。…そして彼は、貴方よりも深い所へ堕ちました。地獄よりも深く暗く、そして冷たい所へ。』

あたしが振り返った先に、一人の泣き女が立っていた。
死を翌日に控えている人の顔は、よく見えないんだそうです。
その人が死んでから、その人の死の前日の表情を思い出そうとしても、それはとても難しいことなのだそうです。
…経験は無いですが、もしそうだったら少し寂しいですよね…。
顔が思い出せない理由というのが、「魂の半分が既にあの世に逝っているから」なのだそうで。
自分はあの世の存在を信じてはいませんが…ただ、生に満ち溢れていない人間というのは総じて表情の変化が乏しいので、顔が思い出せないというのも頷けるかな…と思ったり(自論かよ)

死は誰にでも平等にやってくる。
ケーキを焼いたりお洒落をしたりして出迎える必要は無い。
金持ちにも貧乏人にも等しくやってくる。

っていう感じの言葉が、自分の愛読書の一節にあるんですけれど…。これってとても大事なことだと思うのです。「生まれ」て「死ぬ」という一連の流れは、誰にでも絶対的に定められていることで、誰も逃れることは出来なくて。「生まれ」て「死ぬ」までの過程では、大きな幸不幸の差があるでしょうけれど…最初と最期は平等。これって、自分の中ではとても大事な考えなのです。

人の死に関係する仕事をした経験がありますが、どの人の死も痛々しくて重々しくて…悲しいものでした。それ以上に痛くて重いと感じたのは、彼らに対する周囲の反応でしたけれど…。
確かに死んだ彼らには後々のことを考えて欲しかった…とは思いますけれど、責めるのはお門違いかなと思うのですよ。死んだ人間に何を言っても意味が無いのです。
お金の為とか、仕事だからとか…そうは思えど最初は思いっきり体重落とすくらいに食べ物の匂いに敏感になって何も食べられなくなったり、空っぽの胃で何かを吐き出そうとしたり…。まぁ、慣れてしまえばそういう症状もなくなりましたけど。
彼らの周囲の人たちの畏怖と嫌悪と、同時に好奇心の垣間見える視線ほど腹の立つものも、正直なかったです。
分かってます。彼らがそういう風に思ってしまうのは、仕方のないことなのだと先輩に言われました。
もし自分も第三者であったなら、その人たちと同じ事を思うでしょうから、それこそ腹を立てるのはお門違いなのだと分かっています。

ざっくり割り切って、ちゃきちゃき仕事して、美味しいもの食べて、沢山談笑して、それからぐっすり眠ればいい。起きたら元通りだ。
これ、先輩から教えられた「嫌なことを忘れる方法」です(笑)
……ぅむー…非常に難しいと思うのは自分だけでしょうか?重い気分の時には物事を割り切るのも、美味しくご飯を食べるのも、楽しく談笑するのも、快眠するのも、とても高度なテクニックを要すると思うのです…。

そんな先輩は、自分の憧れの人です。
物事を前向きに捉えることが出来て、切り替えが早くて…そんな先輩を尊敬しています。本当に。
また自分が、その仕事をやることは一生ないでしょうから、もう二度と会うこともないでしょうがー…頑張ってクダサイ!!
(そして結局何が言いたかったのか分からずに終幕/ぇー)
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