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見下ろす街は、夜でも煌びやかな色に溢れていて。
大地は多くの建造物や石畳で、蓋をされ。
多くの人が行き交い、笑い、怒り、悲しみ、踊り、歌う。

つまらない。
天上の世界はとてもつまらなくて。
あたしはそっと地上の世界へ声をかけた。

周囲へ目の行かない者には聞えない。ただ目を凝らしているだけでも聞えない。
周囲へ耳の行かない者には聞えない。ただ耳を澄ましているだけでも聞えない。

『あたしの羽、あげるから……君のその足をください。』

地上に立ちたいの。
みんなとてもつまらなさそうにしているけど、あたしはそこに立ってみたいの。どれだけの苦痛も耐えてみせる。
変化のない日常が退屈で仕方が無いのは、貴方たちだけじゃない。
本当の意味での「変化が無い」を知っているのはこのあたし。
毎日が退屈で仕方が無いの。

朝起きて、学校に行くの。
愛とか平和とか自由とか解放とかについて語り合って、それから地上がどれだけ卑しくて穢れていて、儚くて切ないものかを、水鏡で覗くの。
耐えられる?
自分たちの世界を棚に上げて、つまらない講釈を延々と垂れるのよ。
お茶をしながら語り合うの。お花に水をやって、川遊びをして、空を駆けて、歌を歌って、軽やかに舞うの。

先輩たちが言うわ。
地上へは絶対に降りたくないって。
先生たちが言うわ。
あたしたちの身体は地上の空気に毒されてしまうから、長くはいられないって。交わりあってはいけないって。
兄さんたちが言うわ。
地上人は愚かで野蛮だって。戦うことでしか己を誇示できないんだって。
姉さんたちが言うわ。
変わり者のお前のことだから、地上へ興味を持つのも分かるけれど、お願いだから危ないことをしてくれるなって。

天上人は足が弱くて、思うように走れないの。
天上人は体が弱くて、長いこと地上の瘴気には耐えられないの。
天上人は心が弱くて、争いごとには向いてないの。

いい加減聞き飽きたわ。
だから言うの。
『あたしの羽、あげるから……君のその足をください。』

呼びかけに、六人の地上人が応えた。
これほどの人の中からただ六人。
彼らはあたしに言ったわ。

『喜んで足をあげよう。だから、自由に羽ばたけるその翼をおくれ。』
『君に足をあげよう。羽は要らない。殺しておくれ。』
『天へお帰り。お前にこの世界は耐えられない。』
『契約をしないか。足はやらない、翼も要らない。もっともっと楽しいことがある。』
『羽と足、少しの間だけ交換しよう。どうか、少しの間だけ貸しておくれ。』
『天上へ帰りたい。もう、こんな所へはいたくない。助けて…。』

あたしの羽は一対。
さぁ、誰の呼びかけに応えようか。
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