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指先で、円を描く。太陽をなぞるように、円を描く。
窓の外では、黄金の太陽が、じりじりと大地を焼き焦がしてる。

僕らは部屋の外には出られない。
太陽の光は僕らを黒く、灰墨の如く黒く焼く。 そこには、一切の遠慮もない。
月は光は僕らを白く、石灰の如く白く焼く。  そこには、一切の慈悲も無い。

今日もまた、日が暮れる。夜が来る。

「姉ちゃん…夜になったら、今日も行くの?」
窓から指を離して、振り返る。そこには全身を黒い服と外套で覆っている、頼りない小さな背中。せかせかと、手袋をつけ、出かける準備をしている。
隙間なく体を覆わなければ、僕たちは外には出られない。
僕の声があんまりにも弱々しかったせいか、姉は僕のもとへ戻ってくる。優しく頭を撫で、抱き寄せてくれる。
「…そうね。早く壁を作らないと、この世界は滅びてしまうから。」
「姉ちゃんが行くことないよ…。他の人がやってくれる…。」
「そうも言ってられないわ。そう言って、壁作りに顔を出さなくなる人、最近増えてきているの。…ねぇ、皆がそう言っていては、壁は出来上がらないわ?そうでしょう?」

僕の頬を撫でる姉の手は、分厚く冷たい手袋の感触。
僕が頭をうずめた姉の胸は、固い冷たい外套の感触。

「姉ちゃん、死んじゃうよ…こんなに爛れて…死んじゃう…行かないで。俺を置いていかないで…っ!」
そっと姉のマスクを取れば、どこまでも白い顔。人形のように、白い顔。…まるで死人。血色は、無い。昔はあんなにも美しく輝いていたのに、もう、微笑んでも何の感情も見出せない。……こんなのって…酷い…っ!
「…っ行かないでっ…一人にしないでよーっ!」
絞り出した声は、あとはほとんど声にならなかった。

独りにしないでと、縋りつく。…独りは寂しいと、泣き叫ぶ。
…けれど、本当にこわいのは姉の死に顔を見ること。僕がかわってあげられたらいいのに。
でも僕は14歳じゃないから、外へは出られない。出られるのは、14歳以上の大人だけ…。
あと…2年。
僕はもう、待てない。

神様なんて信じない。信じられない。
けれど、姉は盲目的に信じているから。
だから神様、もしそこにいるのなら、僕の願いを聞いて。
僕の大切な姉ちゃんを、連れて行かないで。早く、僕を大人にして。

…俺は、16歳になった。
俺は今、壁を作り続けている。太陽の黒い光と月の白い光を遮るための、厚い壁を。皆が無言で、黙々と作業を続けている。
壁が完成する日は来るのだろうか。

俺は今、独りきりで朝食を摂る。
俺は今、独りきりで昼食を摂る。
夜は、大勢の人間に混じって、ただ、壁を作る。

この場所には、実は元々違う話があった。

でも、どうしてもどうしても気に食わなくて、削除。
僅かにでも光を持っている男を書きたかったのに…単語だらけの、あまりにもバラバラな感情の持ち主の男が誕生してしまったので…消した。

名残惜しいとは、あまり思わなかった。
自分の作り出す人物に愛情を感じられないのは、ちょっと致命的なんじゃないかと密かに思ってみる…。

だから、作り直す。
消してしまった彼は、実はきちんと違う場所へ保存してある。
いつか、書き直す。
その時は、少しでも彼を好きになれるといいなぁと思う。

そこで、数話早く、違う青年の登場(笑)
予定は未定。
この青年だって、消えていたかもしれないから。ここに上げられてよかったなぁ…。
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