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ただでも目つきの悪い目はさらに鋭く、見るものを射殺すかというほどの眼光を放ち。広げていた扇を一見優雅にも見える仕草ですぱんと閉じて、彼女は不快げに口元を歪ませた。
彼女の座る椅子は革張りのとても高価なもので、これ一脚で並みの家一軒ならぽんと買えてしまう。
彼女はその、誰もが座るのを躊躇うほどの椅子にふんぞり返って腰掛け、苛立ちを掻き消そうと紅茶を飲んだ。
「…ふん。こーけいしゃだってぇー?断る。そんなもの、欲しいと思ったことは一度もない!とっとと失せとくれ。あたしゃ忙しいんだよ。」
紅茶の、鼻をくすぐる癒しの香りすら彼女の前には役立たない。
彼女の眼光に竦み上がって肩を寄せ合っていた5人の男たちは、泣きそうな顔をしながら、それでも立ち退かなかった。

「ああ、あああ貴方が代表をやらねば誰がやるというのです!」
「そうですそうです、貴方以上の適任は他にはおりませんですよ!」
「それに、あちらも貴方を希望しておられます!」
「かの方に気に入って頂けるというのは、それだけで名誉なことなのですよ?」
彼女は大仰な溜め息をつくと、ティーカップを後方に放り投げた。
孤を描いて飛んでゆくカップの価格は、やはりとんでもない。しかしカップは床面に着地する前に音もなくかき消えた。

「物を粗末にしちゃダメだって、いつも言ってるだろ。」
「壊れやしないだろ。そうやってお前が片付けるんだから。」
「だからって投げちゃダメだ。」
「五月蝿いね!お前まで説教しに来たのかい?」
「俺はともかく、お客人は君に説教しに来たわけじゃない。」
「喧しい!」
ぱんっと椅子の肘掛を扇で叩く彼女。ふいに彼女の背後に現れた青年は困ったように微笑をもらし、5人の男に頭を下げる。
「すみません、お客人方。うちの主ときたらそれはもう頑固で優柔が利かなくて我儘で高慢極まりなくて…。」
「いや、いいんだ。それより君からも言ってくれないかい。私たちは、彼女に後継者入りしてもらいたい。」
「彼女の実力は俺たちが一番よく知っている。彼女が後継者入りするのに必要な助力は惜しまない。それは、町の皆がそうだ。」
「彼女ならやれると思うからこそ、私たちは少しでも彼女の力になりたいと、思っているんだ。そう、後継者入りは、国一番の名誉だ。」
言い募る男たちに、彼女はそれこそ心底不快感も露わに足を鳴らした。

「五月蝿い五月蝿ーい!何度言ったら分かるんだい!あたしゃ後継者になんてなりゃしないよ!他をあたっとくれ!」

彼女は勢いよく立ち上がる。
男たちは彼女の迫力に押されて一歩下がる。対して青年は、逆に一歩前に出て彼女の肩に手を置いた。
「お客人の好意を無碍にするのか?」
「そんなものは知らない!!あたしが嫌だと言ったら嫌なんだ!!!」
青年の手を振り払って、彼女は部屋を出て行った。男たちの言葉には一切耳を貸すことなく。

そうして取り残された5人と青年。
お互いがお互いに、微妙な表情を浮かべて視線を合わせる。
しばしの沈黙の後、誰からともなく苦笑を浮かべる。

「俺たちは、甘えているな…。彼女には昔から、色々と助けてもらってばかりだ。何の恩返しもできずに、ただ助けてもらってばかりで…。」
「正直、彼女が町を出て行くことを嫌がってくれて、ほっとしているんだ。私たちは町の皆は、彼女が大好きだ。彼女に捨てられなくて、嬉しいとすら思ってしまっている。」
「ほんとにねぇ…何に対してもぶっきらぼうで素直じゃないっていうのが欠点だけど、そこがまた可愛いからねぇ。くくくっ…俺の奥さんなんか、後継者入りを先方から申し出られた彼女を、実の娘のように隣町の連中に自慢してるしな。」
「はははっうちの娘も彼女にぞっこんだよ。恐いけどとっても美人で頭もよくて、とても優しいってね。娘の憧れの人だそうだ。」

青年は頭を下げて、そして笑う。
「そう言って頂けると、主も喜ぶと思いますよ。ま、素直には喜ばないと思いますけれど。」
「ふははっ違いない。」
「…けれど、何故ですか。貴方方自ら主に申し出を受けるようにと薦めるだなんて…正直なところ、驚いています。むしろ引き止めてくれることを期待していましたし…。……今頃主もさぞ、残念がっているでしょう…。顔には出しませんでしたけれど、動揺していました。」

5人はそれこそ困ったように笑う。
「俺たちは、彼女はこんな田舎町で燻っているような器じゃないと思う。彼女にはもっと、彼女に相応しい素晴らしい世界がある。」
「こんな形でしか恩返しできないのが歯がゆいがな。俺たちは、彼女はもっと幸せになってしかるべきだと思う。」
「私たちが彼女を独占するわけにはいかないだろう。彼女をこれ以上、こんな場所に縛り付けていたらいけないんだ。」
「笑って彼女を送り出すのが、私たちにできる最初で最後の恩返しになるんじゃないかと思ってな。他に、私たちにできることなどないだろう?」
「彼女は私たちがいなくとも立派にやっていける。なのに、肝心の私たちが彼女を駄目にしてはいけないと思ったんだ。」

町の皆がそう思っている。
結ばれた言葉に、青年は吐息をついて笑った。

「…ありがとう、ございます。」
青年は、今の今まで主の意向のとおりこの町を離れずにいるつもりだった。けれど男たちの言葉を聞いて、町の人々の想いを聞いて、その考えがかすかに、けれど確実に揺らぐのを感じた。
「…休暇には、ここへ帰ってきてもいいですか…?主と俺を、忘れないでいてもらえますか?」

どうして忘れることができるだろう。時々は帰って来てくれないと泣いてしまう。また元気な顔を見せてほしい。口々に言われ、青年は今度こそ折れた。

「俺からも、主に言ってみます。」
…その必要もないかもしれないけれど…とは言わなかった。窓の外、しゃがみ込んでいる主の頭のてっぺんが、青年には見えていた。

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「ぁいてっこらっ杖はそうやって使うんじゃない!!」
ひと気のない早朝の公園の片隅に、杖の叫びが木霊した。

「もー…むりー…!」
風を起こす呪文を唱え、杖を振る。ただそれだけのこと。
そう、一言一句間違いなく呪文を唱え、術式に沿って正確に杖を振るだけのこと。
けれど青年の杖からは風のかの字も出てこない。木の葉一枚飛ばせない。
喚き散らして杖を傍らの木に打ち付ける青年。するとまた、杖が半分泣いているような声を上げてそれを制した。

「待てこら!だっ、いたっ、待てっ…て!やめんかい!!お前という奴は、俺をもっと大切にしたらどうなのだ!いいか、杖というのはそこらの火掻き棒とはわけが違うのだぞ!魂の宿るひとつの生命なのだ!そこのところをもう少しわか…」
「ぁぁー…っこのままじゃ留年しちゃうよー…!まじいやだー!留年っって響きだけでも格好悪いー!」
「おいお前聞いているの…」
「火と水はいいんだ!なんとか及第点はもらえるくらいには問題なく課題をこなせるんだ!なにがやばいって、土と風だよなー…!土はそれでも多少なりこなせるけども…っ風はなぁ―…!」
「おいお前っ」
「んぎゃー!!まじいやだー!ダチが先輩になるのってどうよ?いやだよなそんなんは!ひぃぃー…!まじでかみさまたすけてよー!」
「人の話を聞かんか!!!」

両手を空に突き上げて、そして力尽きて突っ伏す青年。
杖の声など完全無視だ。

まぁそれも、実は仕方のないことなのだが。

杖の声を聞くことができるのは、術者の中でも特に「高位」な者に限られる。中等学校で行われる進級試験での及第点すら危ういこの青年に、杖と対話するほどの実力はどう考えても、皆無。

そもそも杖というものは作られたときから魂を有している。
「樹の守人」と呼ばれる、木をはじめとする自然界との対話ができる特別な術者が育てた木から作られる杖。その杖は本体から切り離されて尚ひとつの魂として命と心、知恵を有している。
けれど、ほとんどの杖は自ら口を利かない。
己が認めた主人にしか耳を貸さず、また本来の力を貸さない。その時点ではどこにでもある、それこそ火掻き棒と変わらない。それでもその内に秘めた力は有り余る故に、杖自身が力を貸さずとも中級程度までの呪文ならばたいてい問題なく行使できる。
しかし、術者の力量があまりに己にそぐわない脆弱なものであると判断したならば、杖はどこまでも非情だ。場合によってはその術者を焼き殺したりなどもする。
人が杖を選ぶのではない。
杖が、人を選ぶのである。

「いいか、落ち着いてやればできるんだ。お前なら絶対できる。」
今、まったく力なき青年の手の内に大人しく収まっているこの杖は、実は使う者が使えばかなりの力を発揮する代物である。杖自身が探そうと思えば、かなりの高位の術者のものになることも可能なのだ。
けれど杖は、かれこれ5年近く青年のもとにいる。

はじめて青年と出会ったときに確信したからだ。
この青年こそが、己を御するに相応しい術者になると。
だから…
「落ち着け。たかだか風を操る程度のこと、お前にできないはずがないのだ。俺の目に狂いはない!」
こうしていつも青年を叱咤激励している。己の声が、青年に届かないことを知っていて尚、それでもいつかは届くと信じて。

これよりさらに数年後。
王宮の近衛隊隊長らとも張り合えるほどの強大な力を持つ一人の青年が、史上最年少の若さで近衛隊入隊を果たすこととなる。

けれどそれは、また別の話。

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今回はちょっとお見苦しいことになっているので覗かない方がいいかもしれない追記ですったら追記ですていうかまるマシリーズっていう今日からマのつく自由業!だとかの小説やらアニメやらをご存じない方にはワタクシが何を語っているのやら皆目検討もつかない有様になっているので観ないほうが賢明ですったら賢明ですていうかまるマシリーズ知ってますか?喬林知さんの書いているアニメ放映もされちゃってる人気の小説なのですよていうかだったらどうして知らない人にはつまらないだけの話をブログを使って書くのかといえば書かずにはいられないほどショッキングな事態が新刊で起こったからでどうしてもこの気持ちを吐き出さずにはいられなかったというか万里の道も一歩からてな感じでいち読者の嘆きをブログで見かけた作者さんがあの事態をどうにかしてくれるかもしれないとか夢みたいなことを思っているだけであれおかしいな万里じゃなくて千里だったっけではなく話を戻すとワタクシ以外の読者の方にも大勢そりゃもう大勢今回の事態に嘆き悲しんでいる人がいるわけでヨザ同盟なんてものまで世間じゃ作られているわけでだったらワタクシもそれに同調したっていいんじゃないかと思ったんですよ。

と、いう具合です。
句読点も改行もない文章って、本当に目障りで読みづらいですね(極笑)とにかく、追記もこんな調子で何言ってるのか分からない文章になっているので、まるマを知らない方は読んでも尚一層混乱されるだけかと。
それと、マニメ(マ王のアニメ)しか知らない、という方も読まないほうがよいと思います。
何故って?だって、今回の非常事態は、マニメではまだ向かえていない展開ですから。…まだ、といっても、マニメと原作は結構お話に差異が出ているので、今後同じような道を辿ることもないかも知れませんが…。

悲しみのロンド(意味不明)

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かつて、「鴉」と「雲雀」の主であった男。
単なるいち王佐にすぎなかった男は一国の王となった。

守るべき王を失い、守るべき民の多くを失い、右腕を失い、両目の視力を失い、左耳を失った。それでも男は戦い、国を戦の混沌から救った。
とはいえ救ったとは名ばかりの傲慢な言葉で、その実は、怒りと悲しみに我を忘れた男の暴走が運よく国を勝利へ導いたに過ぎない。

これ以上何も失うものなどないと過信をしていた男は、感情のままに多くを踏みにじり握り潰し、そうして殺してきた。罪悪ひとつ感じることなく、この殺戮行為こそがやがて国を守ることになるのだと妄信していた。

鴉と雲雀の…主に鴉の静止に一切耳を貸すことはなかった。
鴉と雲雀は男の使役する獣であり、どんなことがあろうとも男から離れていくことはないと愚かな過信をしていた。
男は傲慢にも鴉と雲雀の忠誠心や敬愛の心を、絶対の服従心だと勘違いしていた。男が解放してやらない限り、二人を失うことなどありえないと思い込んでいた。

けれど今、男の傍らにはそのどちらもいない。
再三に亘る鴉の静止と雲雀の忠告を黙殺した。
鴉を失ってようやく我に返ったが時既に遅し、雲雀もまた男の下を飛び立った。
生まれてこの方ずっと共にあった鴉が、自発的に男のもとを去るなど思ってもいなかった。常に物静かであった雲雀が男を責めるなど、はじめてのことだった。それほどまでに二人を追い詰めたのは男以外の誰でもない。
後悔など、なんの意味もない。

男は王の部屋の窓から、青い空を見仰ぐ。
四十一年前、まだ王佐として国に仕えていた頃の男とは似ても似つかない容貌。随分とやつれ顔色もよくない。それでも男は毅然としていた。

鴉と雲雀が己のもとを去り、今度こそ全てを失ったかと思った。
けれど男はまだこの国に必要とされた。
だから男は生きている。今度こそ道を見失わないよう、国の為に誠心誠意生きると決めたから。そうして王となり二十年、男は賢王と謳われ、国も安泰した。妻を娶り子を成し、その三人の子らもまた猛き賢き王子だと言われている。
長男は学問優秀で、国立の大学校で術学を学ぶ道を選んだ。
三男は自由奔放で、今はどこで何をしているのやら、常に国を空けて各国を見聞して回っている。

次男は明日に戴冠式を控え、落ち着きがない。
文武共にそれなりにこなす子だ。愛想のよさでは三兄弟いちで、普段は多少気弱な面があるが、いざというときの決断力には目を見張るものがある。

男は最近よく昔のことを思い出すようになった。
悪い思い出ばかりではない、楽しかった思い出も、ちゃんと思い起こせるようになった。そうして夢に見る。
愛する王がいて、民たちがいて、鴉がいて、雲雀がいて…男がいる。憂うことなど何もない、幸せな日々。

「全てが終わったら。ひと目でいい、お前たちに会えるだろうか。今一度、お前たちに謝りたい…そして感謝の気持ちを伝えたい。」
王の部屋。男は窓際に腰掛け、真っ青な空を見仰ぐ。
涼やかな風が男の頬を撫で、部屋の中に舞い込んだ。

―…明日、貴方を迎えにゆきます。

不意に頭に直接声が響いてきたのはその時だ。
誰の声か…そんなこと、分かりきっていた。けれど信じがたいことだった。雲雀の声が聞こえるなど、あり得ない。雲雀は男を怨んでいるはずで、もうとうの昔に去っていった者だから。
男は立ち上がり、周囲を見回す。

「雲雀…雲雀…!すまなかった…私は間違っていたんだ。君に謝りたいと、ずっと思っていた。どれほどのことをしても君には償うことはできないが…鴉にも…取り返しのつかないことをしてしまったが…それでも、私は君に謝りたいと…っ!」
―…主、貴方は全ての罪を償いました。
「違う!そんはことはない!私の罪は、決して拭われない。」
―…主、北の御方は生きておられます。貴方に再び会いまみえる為、帰ってきたのです。けれど主は、己の罪を悔いて、今度こそ国を守るため、頑張っておられた。だからこうして、主が全てを終えるのをずっと…二人で待っていたのです。
「私を…私を許すというのか…?あれほど君たちを苦しめたのに!」
―…そんなこと…。ワタシたちは元々、貴方を怨んだりはしていないのですよ。苦しんだのは、主を愛していたからです。ワタシたちは主とまた、三人揃って幸せになるため、ずっと、主を待っていたのです。

―…主。
「鴉…!」
―…よく、頑張られたな。ワタシは主を、誇りに思う。

『ワタシたちは永久に貴方と共に。』

翌日、戴冠式を程なく終えた元一国の王は、忽然と姿を消した。誰もその行方を知る者はいない。

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銀の嘴は絶望した。希望など欠片もなかった。何を信じることもできず、何を糧にしたらよいのか分からず、ただ己の心の弱さにばかり絶望し、身動きひとつ取れなくなった。
だから…逃げ出した。
獣として唯一心を許した南の御方にすら背を向け、闇へと堕ちた。

主にはじめて出会ったのは、銀の嘴が成獣して間もない頃だった。
世に生れ落ちておよそ一千年、銀の嘴がようやく迎えた成獣。
それはあまりに遅い羽化だった。銀の嘴は、突然己の手に余るほどの力を手に入れてしまったのだ。銀の嘴は拒否する間もなくその力に自我を圧され、精神に異常をきたした。
主が目の前に現れたのは、そんな時だった。

殺戮の虜になっていた銀の嘴を押しとどめ、諫め、力の抑制と制御の仕方を教えてくれた。優しく、時に厳しく根気よく銀の嘴を励まし続けてくれた。
最初こそ銀の嘴は生まれてはじめて接する人間の温もりに怯えたが、気付いた頃には主を何より大切に思うようになっていた。
銀の嘴にとって主は誰より賢く暖かで、何より気高く優しい人だった。
何を差し置いても守り抜くと誓った。

銀の嘴は主の元へ下り、主の為だけに生きることを決めた。

それよりさらに半世紀、銀の嘴は南の御方に出会った。やがて銀の嘴は南の御方を心底信頼し、心を許すようになっていた。
銀の嘴にとって南の御方は誰より強く鮮やかで、何より静やかで穏やかな獣であった。

逃げ出した銀の嘴。
振り返るつもりなどなかった。
全てを見限り、全てに背を向けて闇へ堕ちてきた。

『北の御方…。』
深い眠りに就こうという刹那、密やかな声が銀の嘴を呼んだ。それは紛れもなく南の御方の声であり、銀の嘴が聞き間違えるはずもなかった。
見捨てて逃げ出したのに、追いかけてきてくれた南の御方。
銀の嘴は心の中で血の涙を流し、南の御方の迎えを拒否した。

今更縋ろうとは思わない。
もうどんな希望をも必要としない。
そう、決めた。

『北の御方、ワタシは必ずや、この闇を払ってみせましょう。』

決めたのに。

『御方をこの闇から連れ出すためなら、どんな犠牲も厭わない。』

決意が、

『御方はワタシが獣の中で唯一心を許したお方です。その御方を救えるのなら、どんな努力だって怠らない。どんな小さな希望にだって縋りついてみせましょう。』

心が、

『どれほどこの闇が暗かろうと御方を感じることができるから、ワタシは立ち向かえるのです。ワタシは二度と後悔しない。全力で御方と主の幸福を取り戻すと、決めたのです。』

揺らぐ。
傾いで、ぐらついて、締め付けられる。
銀の嘴はとつとつと語られる南の御方の言葉に、ただ押し黙る。口を開けば慟哭しか出ては来ないような気がして。

『…一緒に、帰りましょう?』
『一緒に……。』
『ええ、これからはずっと…三人一緒です。今度こそ、揃って幸せになりましょう。』
力強い言葉。
何も恐れない、どんなに厳しい運命にも立ち向かえそうな、自信に満ちた声。銀の嘴は、歪む視界の彼方に南の御方の白く輝く翼を見た。

―…枯れ果てたと思っていた涙がひとつ、こぼれた。

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闇を穿つ一筋の光。
その光はすいと闇を落ち、やがて闇の底に辿り着いた。そして純白の翼を広げ、金の嘴を鳴らして鳴いた。青灰色の澄んだ瞳が限りない闇のそのまた先を見据え、何度か瞬いた。

『北の御方。』
小川のせせらぎのように、呼ぶ。
応えはない。

『北の御方。』
春風の囁きのように、呼ぶ。
応えはない。

『北の御方。』
まどろむ午後の日差しのように、呼ぶ。
応えはない。

『どうかワタシの呼び掛けに応じてはくださらないか。…北の御方…ワタシは、御方を救うために、此処に参った。北の御方…ワタシは、御方のためなら命を失うことなど厭わない。』
小さな鈴の鳴るように、話しかける。
応えはない。

『主様が言っておられた。命など惜しくはないと…己が身を捨ててでも闇烏…御方を闇から救い出さなければと。主様は悔いておられる。私利私欲の為だけに御方を使役したことを、心から悔いておられます。』
金の嘴は必死になって鳴いた。翼を鳴らし、いくつもいくつも真珠の涙を零して泣いた。
闇の彼方に蹲っている、金の嘴が同じ獣として唯一心を許した相手に向かって、語りかけ続ける。喉から血が出ても、金の嘴は嘴を閉じなかった。

北の御方は聡明で美しい、漆黒の使い魔だった。
主もまた聡明で美しく、武芸に長けた美丈夫であり、また己に厳しく万人に優しい、北の御方と金の嘴にとって最愛の主であった。

…だがある日を境にして主は変わった。

主は守るべき王を失った。守るべき民の多くを失った。右腕と両目の視力、そして左耳を失った。
変わり果てた主は気が狂ったように敵国への憎しみを吐露した。主は国の為民の為…そして、亡くなった王と多くの民の為と言いながら、北の御方の力を北の御方が望まないやり方で使い続けた。
他の国を…他の国の民を滅ぼすためだけに。
北の御方は嘆いた、主を責めた、主を止めようとした、主を諭した。けれど主の耳には、そのいずれも届かなかった。
やがて北の御方はその身を闇に蝕まれ始め、力を失い、心を失った。生ける屍となった北の御方は、最後の力をみずから闇に委ねることで主の元から去った。

主は北の御方が居なくなってはじめて、我に返った。
金の嘴は気が狂いそうなほどの強烈な怒りと悲しみに耐え切れず、はじめて主を罵倒した。同じ獣として唯一心を許した北の御方を想うと……いや、それよりも北の御方に何をしてやることも出来なかった自分の不甲斐なさ想うと、ただ、泣き叫ぶしかなかった。
やがて主は自らの過ちの重さに病み、倒れた。

金の嘴は考えた。
自分の魂ひとつで闇から北の御方を救えるのなら、安いものだと。主の心を傷つけた代償は、北の御方を救うことで果たせるのではないかと。
だから金の嘴は闇に飛び込んだ。
全てを終わらせるために。

『北の御方…。』
『…捨て置け。』
そうして幾度呼びかけただろうか。ようやくひとつの応えがあった。金の嘴は歓喜にか悲愴にか、泣きたいほどの苦しみを覚えた。しかし、自分を落ち着けるようにゆっくりと嘴を開いた。
『北の御方…御方は主様の元へ戻らねばならない。』
『断る。ワタシのことは、二度と再び顧みるな。ワタシは…一人になりたい。もう充分に尽くした。ワタシという存在全て…魂までをも削って、最上の忠誠を持って仕えてきた。これ以上何を望む。』
『御方、主様が望むのは御方と再び合間見えることのみ。もう一度共に野を駆けたいと、言っておられた。』

長男沈黙が降りる。

『頼む…戻ってくれないか。もう、無理だ。』
『何を無理なことがありましょうか。』
『…ワタシがワタシでなくなっていくのが分かるのだ。ワタシはいずれ…全てを憎むようになるだろう。全てを貪り殺し、焼き払い、押し流し、呪うだろう。ワタシはすでに、闇に侵され始めている。』
『ワタシがお救い致します。どうか、御方の希望をワタシに預けてはくださらぬか。』

長い沈黙が降りた。

『……ワタシは、これ以上、何も憎みたくない。これ以上、何も壊したくない。これ以上…あの人…主を呪いたくはない。』
『そうはならないでしょう。主様は元に戻られた。御方もまた必ず、元に戻ることができましょう。…けれど、お二方が本当の意味で元に戻られるというのは…お二方がまた、お二人一緒にあってこそ、です。』

金の嘴は、一歩だって引く気はない。
金の嘴は、己の全てをかけてでも北の御方を闇から連れ帰ると、己に強く誓っていた。
もう負けない。
二度と、大切な者を失わないように。
失わないために、次は全力で手に入れると決めた。

主様と北の御方の時間を、己が手で取り戻す。

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今日のお話は、悪魔の変装を見破ろう★というお話。

悪魔は化ける。
通常、それは人間と会う時のみとされている。たとえば、悪魔同士で語らっている最中などには間違っても化けない。当たり前の話だが、「俺、フラれちゃったんだよ…」などと嘆いている時に、相手にカバに変身されようものなら即刻殺意が沸くだろう。そりゃあもう、血沸き肉踊る大乱闘になってしまうというものだ。
キノコに化けられてもいい気はしない。

というように、悪魔は人間と会う時のみ姿を変える。
大抵は動物に化けるそうだ。犬や猫が変化人気ランキングの上位に位置しており、それは何故かといえば犬猫は最も人に取り入りやすい…もっと言えば、何処にいても不審に思われない等々の理由があるからだそうだ。

…ここで思うのだが、犬猫嫌いの人間にとっては、彼らが何処にいようとそれは憎悪と嫌悪と拒絶の対象にはならないだろうか…。取り入るどころか、近付くことさえできないはずである。
加えて言えば、国会議事堂の大会議室や大学病院のICUなどにぽつんと犬猫がいれば、それだけで不審だと思うのだが…どうだろう?
…なんて、屁理屈を述べてしまったが、それはさておき。
とにかく、彼ら悪魔の間では犬猫が最も人間からの親しみを得られる動物であると認識されている。

また悪魔は、人を攫うときには馬に化ける。
何故だろう…とにかくこの点は自分としても不思議で不思議で仕方がないのだが、昔から悪魔の間では「人間をつれてっちゃうときはウマが基本だよねー」ということらしい。
逃げ足はかなりのものだろうと推測できるが、そもそも、どうやって背中に人間を乗せるのであろうか。そして、どうやって逃げないように固定するのか…謎である。
まぁ、どうしても馬で攫うというのならば、それは悪魔二人がかりの仕事なのだろう。一頭の馬がもう一頭の馬の背中に、蹄を器用につかって、人間を乗せようとしている…そんな風にうんうん唸って必死な様子の彼らを思うとちょっと笑えr…いや、大変そうだなぁと思う。

次いで、悪魔が人間のお喋りの邪魔をする時は蜂に化ける。
ぶんぶんぶんぶん人間の周囲を飛び回るらしい。何故悪魔が人間のお喋りを邪魔する必要があるのかは、不明だ。

そしてこれは悪魔にとってひとつの遊びでもあるのだが、人間を驚かすためだけに化けることもある。
狼、ハゲタカ、狐、梟、蜘蛛、蛇…龍やドラゴンに化けちゃうこともある。ここであえて龍とドラゴンの違いについて論じることもないだろうが一応。龍は蛇のように長い首と立派な髭と角、鬣を持っている―…いわゆる「日本昔ばなし」のオープニングに出てくるようなアレのことで、ドラゴンはのしんのしんと街を練り歩くための足と羽を持ち、ティラノサウルスの胴体をもう少し太らせた感じのアレのことである。
話がズレたので元に戻ろう。

突然だが、雄でも雌でもよいのだが、鶏を飼っている人に朗報を。
鶏にはちょっとした特技がある。
なんでも、化けた悪魔を見破ることが出来るらしい。そうしてその恐怖にけたたましく鳴き叫ぶ…というのだが、案外と肝の据わった鶏の場合は、正体を見破っても平然としているそうだ。
役に立つのか立たないのか…とにかく、鶏ってば凄いのだ。
フライドチキン万歳。

神話に出てくる半魚人だとか半分人間半分牛、なんていう爬虫類なのか水生動物なのかはたまた人間なのかなんなのか…なんていう生き物は、悪魔たちの悪戯が三割近くを占めているらしい。
残りは天使たちや、長い時を生きた猫や狐などの悪戯。
各国各一族の有力選手たちが集まって行われる変化大会などには、大変興味がある。一度はこの目にしてみたいものだが、当然、ただの人間である自分では観客にすらなれない。

ただの人間であることの切なさというのは、こういう時に感じてしかるべきだと思われる。嗚呼無情。

最後になるが、悪魔は人間に化けることもある。
これを見破るのは案外と簡単である。
けれど間違っても「あんた悪魔でしょう」なんて言っちゃいけない。下手をすると首を跳ね飛ばされるかもしれないからだ。そうでなくとも「馬鹿言ってんじゃねーよー」などと言われて頬を張り飛ばされるかもしれない。
中には奇特な悪魔もいて「ぴんぽーん♪見破ったご褒美に、願い事をひとつ聞いてあげよう★」なんて言ってくれちゃったりもするが、うまい話には裏がある。気をつけろ。後になって「願いを叶えてやったんだから魂をおくれよー」なんて言われても、誰も助けてくれない。

人生何事も慎重に。
これ、一番大事。
最近のマイブーム、身辺整理
本と服を整理して、いくらか売りに出してみた。それから他にも色々な物を整理して、捨てて、まとめて…とにかく一度きっちり片付けてみることにした。

最初は文庫本、単行本、雑誌、写真集なんかの本をまとめ、およそ700冊を売り払った。服は30着ほど売った。……しめての売り上げは結構低くて、結構つまらなかった(ぁ)
売り上げ金でパフェを食べたら美味しかったー(>_<*)
なんとなく波に乗ってきたので、次は押入れに突っ込んである物たちを整理することにしてみた。

まずは大量の写真、写真、写真……写真
……(黙々と整理をはじめて二時間が経過/ぇ)
……っコノヤロー!なんだよこの収拾つかないほどの量はぁぁー!!!お前、これ、どれだけ撮ってんじゃぁー!(ノД<)ノ三[写真箱]
野球少年、卓球少年、陸上少年少女、体育祭に合格発表に……写真部時代に撮りに撮っていたブツがわんさか出てきて、色んな意味で泣き出しそうになったorz
中でも多くの枚数を占めていたのが風景写真。同じ位置(つまり構図はまったく同じ)から日時を変えて撮りまくった空の写真だとか…他にも海やら森やら公園やら…様々。
途中へこたれながらも1000枚ほど処分することにして、どうにか写真整理は終了。

和紙を中心とした紙細工の折り紙たちの整理もした。布やら刺繍糸なんかの裁縫道具も整理したし…小さい頃使っていた、まだ片付けていなかった工具やおもちゃなんかも全部整理した。
書き溜めてきた文章…ネタ帳や日記帳、小説なんかも思い切っていくらか捨てた。

部屋中ひっくりかえしての大清掃…というよりは、まさに身・辺・整・理をはじめて今日で4日。親に「あんた…何かあったの?」と心配されてびっくりした。

心外だ…(むくれ)俺が掃除してるのがそんなに珍しいかっ!俺だって、やるときゃやるんだよっ。
ていうか、自分でも三日坊主じゃない自分にびっくりさ!
ああ、びっくりしているともさ!
何かあったかって?…俺が聞きたいわぁ!!(ばしっと机を叩き)

家出も自殺も考えてませんから。
…いや、前者はちょっとだけ考えたけど…実行するつもりないし(笑)

そんな最近の日常。
気分転換に、スキンをがらりと変えてみた。
蛍のような淡い光がほわほわと彷徨い飛んでいる感じが気に入ったのです(o_o*)
音楽もきちんと聞けるようにしておきました。
寝苦しい夜が続く今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

自分は最近、ちょっといいことありました。
毎日夜更かししているこの頃ですが、それが吉と出たのはとても久し振りです(o_o*)
夢見の悪さも多少解消されてきましたし。

今日は乗る電車を間違えて、真逆方向へ13駅も行ってしまいました(ぇ)いや、ひと駅目で間違えたことに気がついたんですけどね…なんとなく、乗り続けてみました(ぇぇー)
天気もよかったし、川の上に差し掛かったときに一面が濃白色の霧に覆われるというハプニングにも遭えて、楽しかったです。日常茶飯大嫌い、非日常大好き人間を自負する自分としては、まずまずの幸運だった。

てか、今日から学校です(ぁ)
学校終了後、今日は久し振りに大人数でわいわい騒げそうなので、ちょっと嬉しかったり。

小さな幸せを見つけることからはじめようかと思います。

追記は、つい先日友人と自分の間で行われたどうでもいいくだらない日常会話。久し振りに笑ったネタだったので、記念に書き記しておくことにする。

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今日もまた面白いゲームを見つけたのでご紹介。

コレは、城に閉じ込められたお姫様を助けに行く紳士のお話。
……手書き感溢れる作りがなにげに好きだったり。
紳士はとんでもなく普通のおっちゃん、て感じでどう見てもお姫様を助けに行こうという王子様ではない。そのイモさが笑いを誘う(笑)

助ける手順としては城を探索して5つの★を手に入れる、んで、城中央の部屋にある装置にそれらをはめるとお姫様がじゃじゃーんっ…というよりは…みょ~んと登場する(笑)
緊張感の欠片も無い作りになっているのが面白い。

そして何よりこのゲーム……ちょっとエロい(ぁ)
エロいというよりは下ネタ?なのか?

○○揉むと喘ぐ女の像とか、トイレの○を○○なきゃいけないとか、中央の部屋の装置奥にあるたくさんの女とか……(遠い目)
その他、リアルに気持ち悪い点もあるこのゲーム、わりと面白い。
終わり方が特に好き。

折角助けたお姫様なんて、
「じゃ、俺助けたんで。あとは自分でどーにかしてください。さいなら。」
と背を向けたくなるような…可愛くない人だったり…orz
おぉう、そんなんってありなのかー(号泣)
ミニゲームで何度も死んでまで苦労した俺の苦労はどうなるんだ…ッ!!

Things came up to my Brain Museum

ヒントが欲しいという方は、いつものようにコメントなり何なりで言ってくださればお教えいたします(o_o*)

追記は、今まで「ヒントを教えてください」とこっそり隠れコメントを…もしくはお手紙をくださった方々、加えてこれからそういう手段を使ってヒントを請求しようと思ってる、という方々へのお手紙です。

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海岸で輝く石を拾った。

その海に、砂浜はない。あるのは少し大振りな砂利浜。波が打ち寄せるたびにじゃららじゃららと小気味いい音を立てては、波に濡れたその身を陽光にさらしてきらきら光る。
青い空には白い雲。
白、黒、灰色…中には輝く赤や黄色、緑も混ざっている色彩豊かな浜に寄せては返す波の色は、澄んだ青。
まるで御伽噺にでも出てきそうな情景。

ここで俺は一欠けらの絶望を握り締めて、浜に佇んでいる。

「やらないからな。」
「おや、気づいていたのか。」
「それだけの殺気を放っておいて、それはないだろう。」
返した俺の脇に、人の気配。正確には人じゃないんだが、今は人の形を取っているから人と言ってもいいだろう。
そいつは、「感心感心…」と人をこ馬鹿したように手を叩きながら言った。肩が揺れているのは、笑っているからか。どちらにしろ俺は目を向けなかったし、向けるつもりもなかった。

「一刻も早く、安全に砕く方法を見つけなきゃならない…。」
「そんな方法は世界中を探しても見つかりっこないね。それに、軍がもうすぐそこまで来ている。軍以外にも、それを欲しがっている奴は五万といる。まず逃げ切ることはできないだろうさ。」
「その為にお前がいる。」
「……そのようですね。」
溜め息半分、そいつは失笑して肩を竦めた。
そして沈黙が落ちる。俺はこれで話は終わったと目を閉じ、じっと波音に耳を澄ました。ひとときだけの……おそらくこれが最後になるだろう安息だからこそ、大事にしたかった。

…そうしてしばらく。
ちゃらちゃらと砂利を掬っては、ばらばらと零す音。零してはまた掬って、ばらまく。そんな音に引かれるようにして俺は目を開けた。
そしてそのまま視線を音のするほうへ流すと、足元で膝を抱えて石遊びをしているそいつが目に入る。

じゃり…っじゃ…ばらばら…じゃらら……からんっ…。
呆気なく枯れ果てる人の命。
あっという間に萎れ朽ち果てる花の命。
何故だろう、俺は、静かにそんなものを連想した。

と、何気なく視線を上げてきたそいつは、俺と突然目があって、ぎょっとしたように目を見開いた。手にしていた砂利が、指の隙間からこぼれて落ちる。
「…楽しいか?」
「え…別に。そんなことはない。」
自然と笑みが零れる俺。自分よりもはるかに歳のいっているそいつが、まして人間ですらないそいつが…いじけた人間の子供のように砂利と戯れている姿を見て、口元が緩んでしまった。
そんな俺に戸惑うように、けれどぶ然とした様子でそいつは唇を尖らせた。それがまた幼い子供のようで、俺は笑ってしまった。

「忘れるな。お前は俺の従獣で、故に俺に逆らうことは出来ない。お前に、主である俺を傷つけることは、できない。」

笑顔のままで唐突にそんな事を言い出したことに、意味はない。けれどそいつはぱちりと瞬きをひとつして、そいつにしては珍しくちゃんと耳を傾けてきたので、俺は続けた。
「お前がいかにこの石っころが欲しかろうと、それで俺を殺したいほどうらめしく思っていようとも、お前に俺は殺せない。傷ひとつ付けることすら、不可能だ。お前は俺に付き従って旅に出て、そして俺をあらゆるものから守らなきゃならない。俺はお前を解放してやるつもりはこれっぽっちないからな。俺だって、自分の命が可愛いんだ。」
「……俺の命はどうでもいいのか。」
「従獣は俺たち人間よりもよほど頑丈で高齢だろうが。」
「…へぇへぇ、さようでございますね、ご主人様。」
作った笑みが返って来る。

「そちらこそ忘れるな。俺は隙あらばお前を殺したいと、いつでも思っているんだ。お前を殺すことが出来れば俺は自由だ。さらに輝石までもが俺のモノになる。」
「…上等だ。俺の従獣である以上は、そのくらいの気概を持っている方が心強いというものだ。」

輝くその石の名は、望春石ミハルイシ
淡い薄桃色のその石の所有権をめぐり、過去、そして現在も多くの人間が死んでいる。
俺は、亡き曾祖母から託されたその石を手に、今夜世界に背を向けて逃げ出す。

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と、いうものがあるそうだ。
悪魔の辞典なのか、はたまた悪魔のような辞典なのか…なんて言われているが、ぶっちゃけ悪魔のような悪魔の辞典、でよい思う。
前者を人間の辞典と置き換えてみた場合、人間辞典なるものを人間界で作ろうと思ったら、それはそれは骨の折れる作業になる。ただの一日で多くの人間が生まれ、そして死んでいるからだ。
同じく、悪魔界に悪魔がどれだけいるが知らないが、それら全ての悪魔さんたちに個人情報をおくれと頼んで回るのは、そりゃあとんでもなく大変な仕事になる。悪魔によっては口を利く間もなく首を跳ね飛ばしてくる悪魔もいるわけで、人間なんかに聞くよりよほど危ない。
デッドオアアライブだ。
それでも「アナタのお名前なんざんしょー」なんて一悪魔ひと悪魔(一人ひとりと書いたらおかしいだろうし…)に聞いて回った地道な編集者の苦労を思うと、涙が溢れて止まらない。
ともかく悪魔の数が人間の数の半分でも、そのまた半分でも、それを辞典としてまとめるにはとてつもない時間と忍耐が必要になる。

とにかく、悪魔辞典。
今日はそんな悪魔関連の話をしてみようと思う。

悪魔辞典。これは悪魔の載っている辞典だそうだ。まったく面倒なことに五十音順じゃなく、体重だか身長だか爪の長さだかの順に並んでいるらしい。とんでもなく使い勝手が悪い辞典だ。
これぞ鬼か悪魔のように使い勝手の悪い辞典といえよう。
……ここでふと思うのが、彼ら悪魔たちは体重や身長や爪の長さが変化しないのかという純粋な疑問。生まれてから死ぬまで同じ体重と身長と爪の長さをキープするのって…結構大変そうじゃないか。
人間と同じで悪魔だって太るはずだ。食べすぎたのはー貴方のせいよーてな具合で太るわけだ。身長だって成長期を迎えた悪魔なら伸びるだろうし、爪なんて、切ってしまえばそれまでだ。改訂に改訂を繰り返さなきゃならないだろう編集者の血と汗と涙を思うと…以下同文。

悪魔辞典を開く時には「お疲れ様」の気持ちを持とう。

…そうは言うけど、辞典のくせに使い勝手が悪いっていうのはどうなんだ、なんて編集者に怒りをぶつけたくなる気もするがそこはそれ、大人になって我慢するのだ。悪魔か天使でもない限り、編集者は既にこの世にいないはずである。きっとあの世でバカンスを楽しんでいるだろう。…そう、いない人間に怒ってみても仕方がない。
悪魔の辞典は悪魔のような辞典、これを前情報として知っていれば、いざそれが手に入ったときの心の持ちようも変わってくるというものである。

さて、話は変わるが悪魔は礼儀正しい。
人間が初対面の人にするように、悪魔だって挨拶をする。そう、きちんと挨拶さえすれば、まず第一印象は悪くならないはずだ。あまりに口臭がきついだとかだらしのない身なりだとかじゃなければ、だが。

また悪魔は非常に疑り深い。
例えばサタンは元々「人に苦痛を課す天使」だった。苦痛を課す…つまり、神に身も心も捧げたと公言している人間が、本当の意味で心底神を信じ、その教えに従うかを調べ、それが偽りの信仰心であれば苦痛を、という具合。故に悪魔は非常に疑り深い。
そもそも疑うことが仕事なのだから仕方がない。
「ねぇ。君ってば、今苛々してる。」
「してないよ。」
「してるよ。」
「してないよ。」
「嘘。」
「嘘じゃないよ。苛々なんてしてない。」
「でも本当の本当はしてるんでしょ?」
「してないってば。」
「なんだか顔が怖いもん。苛々してるからでしょう?」
「してないよ。怖くないよ。」
「嘘だよー。君、絶対に苛々してるもん。」
「うっさい!してないって言ってるじゃねぇかー!!!」
「…ほーら、苛々してるじゃん。」
繰り返すが、悪魔は非常に疑り深い。

…どんどん本題からズレてきているように思うが、気にせずどんどんいこう。小さなことに囚われていては、大器は晩成しない。
ここで「無限」関係者が「へ?何、アレってそういう意味なの?」と思わず口走るような豆知識をば、紹介しよう。
既にご存知の方もいるかと思うが、遥か昔…とは言ってもそんなに昔じゃなく15、16世紀頃に多くの魔道研究者によって書かれた一連の書物を「グリモア(魔法書)」という。天使や悪魔など、彼らの特徴や出身地、能力や召喚方法、性格などにいたるまで懇切丁寧に説明してある優れものである。
これが、現在世界中に散らばるエセ悪魔辞典やエセ神名辞典の大元だと言われている。

伝言ゲームで最初の人間が口にした文章は、人から人に渡っていく過程で確実に改竄されていく。それは修正しようのない誤りで、けれど誰もそれには気づかない。
…最初の人間以外は。
つまり、現在出版されている膨大な数のエセ辞典がどれほどに正確であるか、また不正確であるかは、正真正銘本家本元のグリモアと、そこに記載されている悪魔や天使たちしか知り得ないのである。

悪魔辞典。
庶民的なヒヨッコ悪魔から、悪魔を統率する悪魔の王までありとあらゆる悪魔についての知識が詰め込まれた辞典。一度は手にしてみたい代物だ。仲良くなればご飯だって作ってもらえるらしい。…悪魔の得意料理なんなのか、とても気になるところだ。

…悪魔に家事をしてもらう人間。
……くすっ…楽しそうだ。

長くなったので、今日はここでお開き。
本日は、ちょっとホラーな部類に入るゲームをピックアップしてみます。

このゲーム、ルール自体は非常に簡略的。
「窓がひとつしかない不思議なお部屋から脱出を図ろう★」
いわゆるマウスを使って部屋の隅々までを調べ、手に入れた道具で部屋から脱出しようというゲームです。
普通のマウスゲームと違うところといえば…ちょっと変わったマウスの使い方をしなきゃならないというところ。大抵のマウスゲームはクリックだけで進めますけどね、このゲームはそれ以外の使い方も求められてくるんです。
ぶっちゃけ言ってしまうと、マウスをね、くるくるーっと消しゴムをかける要領で使わなきゃなんないんです。壁をね、ごしごしと擦っているとモノが見えてくるんです。

さて、自分の見解では、このゲームの主人公は精神異常者。
…だって、ですよ?薬飲まなきゃ視界がぐっちゃぐちゃのビリビリになっていくのが止まらないんですよ?飲まずにそのまま放置してると視界どころか聴覚までイカれてくるし…。
あれは精神安定剤の一種ではなかろうかと…。
ボリューム上げなきゃ気づけないかもしれないが…あれ、絶対に人の呻き声だし…。息荒いし、なんか言ってるし…。
鳥肌立つ。

……異常何段階目かの時、窓の真後ろの壁に浮き上がってくるアレは、何だろう。人の顔に見えるんだけれど…勘違いも甚だしいよな…な?人間、怖がっているとカーテンですらお化けとかいうものに見えてくるものだ。

幽霊の、正体見たり枯れ尾花。

La pièce

例によって攻略に難が出てきた人は、びしばしお尋ねくださいまし。
大丈夫です。
如何に主人公が尋常じゃないほどおかしくなったとしても、このゲームに限ってゲームオーバーはありませんし、探索は続けられるはず…です。多分。
可愛いゲームを見つけてしまった…ッ(*>×<)

主人公をクリックしてゴールまで導く単純なゲーム。
全部で3面まであるんだけれど…素敵過ぎてハマってしまった。
BGMがいい。
味のある、絵画みたいなステージも、クリックすると可愛く動いてみせるキャラクターや植物、動物なんかもとにかく素敵。

そしてEDの曲が好きだと思う。
ほのぼのゲーム。…クリックして進めるゲームというと、解決策が見つからずに総じて苛々してしまう自分(単細胞め…)。けれどこれは楽しかった。ちょっと躓いても、和み系の曲に癒される。
一番気に入ったのは不可思議な世界観なんですけれどね?
…CD買ってしまおうかしらねぇ…(ぇぁ)

お時間のある方は試してみてくださいませ(へらり)

The Polyphonic Spree - The Quest For The Rest -

躓いた方はご一報頂けるとコメント欄あたりで公開いたしますですよ。

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